スターリング大学

観光ガイドになんで大学が出てくるんだと思う方もいるかと思いますが、スターリングは自称「イギリスでいちばん美しいキャンパス」を誇る大学。歴史は浅くても一見の価値があります。また、スターリング大学留学の下調べのためにこのHPを訪れる方もいると思いますので、学生生活についてもちょっとここで紹介したいと思います。こんなことを教えて、といった要望があればどうぞ。

スターリング大学
キャンパスからウォレス・モニュメントを望む。スターリング大学のキャンパスには中央に湖があるのです

スターリング大学ってスターリングにあるんじゃないの?

・・・と私も最初は単純に考えていたのですが、実は町の中ではなくて、スターリングの町からブリッジ・オヴ・アラン方面に向かう道の途上です。ウォレス・モニュメントのすぐ近くですが、スターリングの町にはバスに乗っていくことになります。徒歩も不可能ではありませんが、普通に歩いて片道40分くらいはかかります。私は週2回この道を歩いて町のスーパーマーケットに通ったおかげで、留学していた1年間にけっこう痩せました。路線バスでスターリング大学に行く場合は、スターリング大学行きバス(大学構内のバス停が終点)か、ブリッジ・オヴ・アラン行きの途中で降ります(キャンパス正門前にバス停がある)。

キャンパス

大学になる前は

スターリング大学が開校したのは1967年。イギリスの大学は、前身が単科カレッジや専門学校だったのを総合大学に昇格するという形で設立されることが多いのですが、スターリング大学はカレッジのない町にまったく新規の大学を設立した、わりと珍しいパターンです。もっともジェームズ6世(後にジェームズ1世としてイングランド王位継承。詳しくはスターリング城の項参照)は「スターリングにカレッジをつくる」と約束していたということですから、遅まきながら国王の約束を実行したわけですね。

イギリスでは19世紀〜20世紀初頭に設立された大学を「赤レンガ大学」、戦後設立の大学を「コンクリート大学」と呼ぶことがあります。スターリングは「コンクリート大学」というわけですが、建物は色気のないコンクリートでも、立地は魅力的。新しく設立したといっても、まったく何もない更地にキャンパスを作ったわけではありません。このあたりはかつてエアスレー(Airthrey)と呼ばれていた土地ですが、そのエアスレーの領主のお屋敷の庭だったところなのです。木々が植えられて緑豊かな庭の中央には人造湖があり、昔は冬になるとここでカーリングをやったという記録が残っています。

また、エアスレー領主がこの土地を手放した後、しばらくこのお屋敷は産院として使われていました。大学ができた時には、ここの産院で生まれた赤ん坊が大学生として戻ってきたというので、ちょっと話題になったそうです。

エアスレー城

エアスレー城 18世紀に建てられた領主の居館エアスレー城もそのまま残っていて、語学留学生やTESL(Teaching of English as a Second Language、外国語としての英語教育)の留学生はこのお城で勉強します。お城の前が小さなゴルフコースになっているのがいかにもスコットランド。このお城はロバート・アダムという当時大変人気のあった有名建築家の設計したものです。ロバート・アダムの設計で有名な建築というと、エアーの近くにあるカリーン城(Culzean Castleと書くが、zは発音しない)などが有名です。田舎領主の家であるエアスレー城に比べると、スケールも数段上でなかなかこった建築です。機会があったらこちらもぜひ見てみてください。

カリーン城の室内装飾には、ちょっとウェッジウッド陶器を思わせるような繊細なレリーフ模様がたくさん使われています。これは偶然ではなくて、ロバート・アダムとウェッジウッドが知り合いだったかららしいのですね。ではエアスレー城にもこれが使われているかというと、実は私はよく知りません。「1年間の語学留学中エアスレー城で毎日勉強していたくせに、知らんとは頼りない」という非難の声にに答えるために、まず昔のお城というものがどういう構造をしているかという説明から。

昔イギリスのテレビドラマで"Upstairs Downstairs"というのがありました。一昔前の上流階級の一家と、その使用人達の暮らしを描いたドラマでしたが、「階上・階下」という意味のタイトルは、階上の美しく飾られた部屋で優雅に暮らす主人一家と、階下の部屋で立ち働く使用人の間には、目には見えないけれどもはっきり境界線が引かれていて、2つのかけ離れた世界はけっして交じり合わないのだ、ということを象徴していました。

エアスレー城の場合もこれと同じで、建物の中がいわば表と裏にはっきり分かれています。お城の中には2つの階段があって、表階段は美しい木彫りの大きな階段で、領主一家やゲストが使い、1階の大広間から階上の寝室や居間に通じています。裏階段の方は、各階はずれのドアのうしろに隠れており、半地下のキッチンや食糧庫や使用人部屋に通じるようになっています。ドアがついているのは、使用人が行き来するのが上流の住人やゲストの目に入らないようにという配慮です。こちらの階段はもちろん実用一点張りで、味もそっけもない設計です。

語学センターになった今は、お城の中の部屋は上下の別なく平等に教室として使用しています。主人用の居間で勉強するクラスもあれば使用人の仕事場で勉強するクラスもあるというわけで、私のクラスは要するに外れクジだったんですな。真っ白に塗られた部屋の中は一切飾り気がなく、半地下なので天気がよくて暖かい夏の日でもいつも寒い、冷え性にはつらい教室でした。階上の教室を使った当たりクジ組のクラスは、立派な暖炉のある日当りのいい美しい部屋で、貴婦人のごとく優雅に勉強していたようですが、「使用人クラス」に属する私は足を踏み入れたことがないので、どんな装飾を使っているかなど詳しいことはよく知らないというわけです。階上の部屋で勉強したことがあるラッキーな方、情報提供を歓迎します。

「コンクリート大学」

「コンクリート大学」の名にふさわしく(?)、エアスレー城以外の建物は白いコンクリートブロックばかり。キャンパスは中央の湖をはさんで片側が居住エリア、反対側が教室棟とショップ・娯楽エリアになっています。学生は居住エリアの寮に住み、湖にかかった橋を渡って教室に通うことになります。また、授業がない時間は教室と同じ側にあるショップエリア「マクロバートセンター」を徘徊したり、その外にあるバス停からバスに乗って町に出かけるというわけ。教室棟はマクロバートセンターとバス停を挟んだ向かい側ですが、渡り廊下で直接つながっています。私は正規留学生ではなかったので、講義を1つ聴講した他はエアスレー城で勉強したため、教室棟にはほとんど入っていません。なんだか迷路のように入り組んでいたなあという印象がありますが、慣れないせいだったかもしれません。

スターリング大学
湖の対岸の白いコンクリート建物群は学生寮

マクロバートセンター(MacRobert Centre)

町から少し離れているスターリング大学では、キャンパスから出なくても一応自給自足で生活できるようになっていて、そのための施設が集まっているのがマクロバートセンター。新聞雑貨店、郵便局、銀行、文房具店、書店、薬局、旅行代理店から小さな小さなスーパーまで並んでいます。といっても食料品は町のスーパーに買い出しにいく人がほとんどですが、牛乳が切れたとか、ちょっとしたものが必要になったという時には、この店がとても重宝します。また、マクロバートセンターの奥にはバーやディスコなどもあり、週末には終バスの時間を気にすることもなく気軽に夜遊びができます。イギリスのディスコというものは11時を過ぎてやっと客が入り始めるものだということを、私はここで知りました。店じまいは2時ごろでした。

図書館と学食もこの建物の中。昼食にはこの学食のご厄介になることが多くなりますが、味は正直言って最低でした。イギリスの食事がまずいというのは本当なのだなあと、ここの学食で食べるとすんなり納得してしまいますが、イギリス人学生に聞いても「あんなまずい食事は他で食べたことがない」といいますから、ここは特別なのでしょう。夕食の時間にも開いてますが、1日に2食もここで食べるのはさすがに我慢できないと、たいていの人が自炊していました。

もう1つマクロバートセンターの目玉施設は劇場。あまり大きくはありませんが、映画に演劇、舞踊に音楽とバラエティに富んだプログラムを用意しています。映画など日本に比べるとずいぶん安い上、さらに学割もきくとあってずいぶん通いました。ハリウッドのわりと新しいヒット映画からクラシックな名画に「芸術映画」、海外映画など、いろいろ幅広く上映しています。特にスターリングで海外(=非英米)映画を上映するような気の利いた映画館はここだけ。日本映画なんかも時々来ます。邦画を英語の字幕付で観るというのもなかなか面白いものですよ。

なお、マクロバートセンターの施設のほとんどは、学生でなくても利用できます。バーやディスコだけは学生証提示が必要。ただし、一般人も学生の同伴ゲストとして入ることは可能(身分証提示が必要)。お店や劇場はもちろん誰でも利用オーケー。図書館は学生でなくても入れますが、貸し出しは不可です。ここの学食にわざわざ食事に入ろうなどという一般人は当然いませんが、隣接のカフェのお菓子類はなかなかいけます。また、最近劇場の斜向かいにバーガーバーが登場し、まあまあ繁盛しているようです(試したことはありませんが)。

ガナキーセンター(Gannochy Centre)

もうひとつ一般市民も利用できるのが大学のスポーツ施設。学生・市民を問わず、スポーツセンターの会員になると、室内プール、テニスコートなどが利用できます。前述したゴルフコースは9ホールの小さなものなので、本格的なゴルファーには物足りないかと思いますが、初心者がゴルフを試してみるには手ごろな場所です。

室内プールに隣接して、スポーツクラブ経営のバーがあり、昼には簡単な食事も出す他、週末の夜にはディスコに変身します。ただしディスコタイムに入るには、学生証の提示が必要です。それにしても、学生が5,000人ほどしかいない大学なのに、やたらと遊ぶ施設ばかりがしっかり揃っているのはどうしてだろう・・・。

学生生活

学生の構成

スターリング大学は、日本のマンモス大学にくらべると非常にこじんまりとしていますが、学生の構成はずっと多彩で、留学生や社会人学生が多い大学として知られています。留学生の中にも、エアスレー城で勉強する語学留学生、海外の提携大学から交換留学などの制度で1年間留学する学生、学部や大学院の正規学生といろいろ。語学留学生はスペイン人と日本人が多く、また正規留学の準備コースをとる学生もいます。こんな田舎になんでこんなにと思うほど日本人が多いのは、提携大学からグループで来ている学生が多いから。なるべく日本人がいないところで鍛えようと思っている人にはあまり向いていないかもしれません。

交換留学は日本からもかなり来ていますが、いちばん目に付くのはアメリカ人学生。正規留学ではなぜかビジネス経営学部に香港、マレーシア等からたくさん留学しています。そのため、全体として東洋顔をたくさん見ることになりますが、その半分くらいは日本人ではなく中国系。私も留学中には中国系留学生と仲良くなりました。(※注1

寮生活

大学の寮については「宿を観光する」の大学寮の項にも少し書いてありますので参照してください。なお、寮生活とホームステイのどちらの方が英語の勉強にいいのだろうと悩んでいる方、私の経験が「ふだん着のスコットランド」『2本指で敬礼』にちょっと出ていますので、そちらも見てみてください。

大学寮は基本的には自炊で、食事は出ません。スターリング大学の寮には「ホール」タイプと「フラット」タイプがあります。他に「シャレー」と呼ばれる山小屋スタイルの建物などもありますが、中はフラットと同じスタイルです。

ホールは入り口に守衛さん(Porter)が詰めており、中に入ると、長い廊下を挟んで個室がずらりと並んだ構成になっています。ホールは基本的に男女混成で、男女別棟になっているのは1つだけです。この唯一の別棟ホールでも、玄関を挟んで片翼が男子棟、反対側が女子棟となってはいるものの、出入りは自由なので、男子が女子棟に遊びに来て歩き回っていることなど珍しくはありません。

ホールの中には、各階にいくつか共同キッチンがあり、またトイレ、シャワー、バスも共用です。階下には公衆電話(私の留学していた頃は携帯なんて便利なものはなかったので、電話を受けるのにはとても不便だった)やコインランドリーがあり、またテレビ室というのも各寮に1つありましたが、正規の学生はほとんどが自室に小さなテレビを持ち込んでいました。
共同キッチンにはクッカー(オーブン・グリル・コンロが一体になっている)と流しが1つずつしかなく、それを8人くらいで共用するので、夕食の時間になると混みあって少々不便でした。また大きな冷蔵庫がでんと置いてあって、扉を開けると小さく区割りされていて、それぞれカギがかかるようになっています(カギをかけていないと中味を盗まれることあり)。冷凍庫がないのも不便でした。

ホールは夏季休暇期間中には閉鎖または旅行者や放送大学のゼミ受講者などが使います。そのため、夏休み中も大学に残らなければならない留学生は、フラットに移動させられます。大学の開講期間中には、フラットは大学院生やキャンパス住まいの教員に割り当てられているようです。

フラットでの生活は、数人がアパートをシェアして共同生活するようなスタイルで、サイズは2人用から8人用までさまざま(1寝室でダブルベッドを置いてある夫婦向けフラットもあるということは、あとになって知りました)。寝室は個室になっていて、キッチン、バス、トイレは共用。同じ建物内の他のフラットとは完全に別々になっていて、フラット毎に鍵がかかります。コインランドリーはフラット棟の外にランドリー室がついていて、他のフラットの住人と共用です。フラットのキッチンの冷蔵庫は普通の家庭にあるような冷蔵庫で、小さなフリーザーもついていました。キッチンのつづきにはささやかな居間のようなものがあり、食事の後にはここで団欒できます。全体にがやがやとしたホールと比べると、落ち着いた生活ができる環境です。

※注1:
今年9月から学部留学中のYukiさんの報告によると、アジア系学生はあまり見かけないとのこと。日本からの団体語学留学も来なくなっているらしく、日本人の数もひところよりずいぶん少なくなっているようです。アジア不況の影響でしょうか・・・。日本人が少ないところで鍛えたい人にはいい環境になっているのかも。でもイギリス人やヨーロッパ系学生がいなくなってしまうクリスマス休暇がさびしいだろうなあ。

ところでこれはまったくの余談ですが、イギリスで"Asian"というと、インド・パキスタン系の人々のことを指します。インド亜大陸より東の国の住民のことは、"Oriental"と呼ぶようです。従って、日本人やマレーシア人、タイ人、中国人など、日本人が普通「アジア人」と考える系統の人々は、イギリス人にとっては"Asian"ではないんですねえ。

※注2:関連情報リンク
スターリング大学での語学研修の内容については、2000年に研修に参加したこたにさんの体験記『I Love Scotland』がくわしいです。ぜひ参考にしてください。

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更新日: 2001-12-09